DEAR 2nd 〜Life〜




「~~~~…っ…






せっかく…



せっかくここまでしたんだもん……」






絶対こんなとこでくたばってたまるか──…!






────ヨロッ…





一歩、また一歩と歩き出すあたしは、もう何かに取り憑かれていたに違いない。








「───お客さん、どちらまで?」





「……T大まで向かって下さい…



出来るだけ早く──…」






何とかタクシーに乗り込んだあたしは、足の激痛に耐えながらそう呟いた。







「──…T大かぁ…



あそこは今日確か学祭やってるよねぇ。



道混んでるから時間かかりそうだな…」





「……」







視界に映る、動かない車の渋滞。




道路に沿って歩くおびただしい人の数。








───…もう





間に合わない事は分かりきっていた。






だけど




あたしはまだどうしようもない奇跡を信じながら



有り得ない夢を見ながら






────ギュッ…






チケットを握り締め







「───…あの、じゃあここでいいです。」





「え?ちょっとお客さん?」





「お釣りいらないです。

ありがとうございました。」






────バタン。






あたしはタクシーのドアを閉め、悲鳴をあげる足を引きずりながら歩き出した。






────ズキン、ズキン…






「…っ」






痛みを忘れる為に、歩きながら思い出していた。














“え…学祭…?”








“うん、彩が来てくれるんやったら俺120%くらいの力出して歌うから!♪”






“───行くっ!!!!

行きたいっ!”












───…ちょうど一年前を。






まだあたしは高校生で




朝岡さんよりぶんちゃんを引きずってて




でも大人っぽい朝岡さんに惹かれてる感じで




まだ無邪気に笑い合っていて






───…まさか




たった一年でここまで離れてしまうなんて思いもしてなくて








「───…ごめんね…」








いつもいつも、あなたの存在が当たり前になってしまっていたこと。





“ただそばにいれる”ことが当たり前なんかじゃない、何よりの幸せなんだってこと。









あなたはそんなことを







ただ“当たり前”のように振る舞ってくれていただけだった。




< 279 / 475 >

この作品をシェア

pagetop