DEAR 2nd 〜Life〜
「~~~~…っ…
せっかく…
せっかくここまでしたんだもん……」
絶対こんなとこでくたばってたまるか──…!
────ヨロッ…
一歩、また一歩と歩き出すあたしは、もう何かに取り憑かれていたに違いない。
「───お客さん、どちらまで?」
「……T大まで向かって下さい…
出来るだけ早く──…」
何とかタクシーに乗り込んだあたしは、足の激痛に耐えながらそう呟いた。
「──…T大かぁ…
あそこは今日確か学祭やってるよねぇ。
道混んでるから時間かかりそうだな…」
「……」
視界に映る、動かない車の渋滞。
道路に沿って歩くおびただしい人の数。
───…もう
間に合わない事は分かりきっていた。
だけど
あたしはまだどうしようもない奇跡を信じながら
有り得ない夢を見ながら
────ギュッ…
チケットを握り締め
「───…あの、じゃあここでいいです。」
「え?ちょっとお客さん?」
「お釣りいらないです。
ありがとうございました。」
────バタン。
あたしはタクシーのドアを閉め、悲鳴をあげる足を引きずりながら歩き出した。
────ズキン、ズキン…
「…っ」
痛みを忘れる為に、歩きながら思い出していた。
“え…学祭…?”
“うん、彩が来てくれるんやったら俺120%くらいの力出して歌うから!♪”
“───行くっ!!!!
行きたいっ!”
───…ちょうど一年前を。
まだあたしは高校生で
朝岡さんよりぶんちゃんを引きずってて
でも大人っぽい朝岡さんに惹かれてる感じで
まだ無邪気に笑い合っていて
───…まさか
たった一年でここまで離れてしまうなんて思いもしてなくて
「───…ごめんね…」
いつもいつも、あなたの存在が当たり前になってしまっていたこと。
“ただそばにいれる”ことが当たり前なんかじゃない、何よりの幸せなんだってこと。
あなたはそんなことを
ただ“当たり前”のように振る舞ってくれていただけだった。