その手で触れて、そして覚えて。

「昨日は、僕から七花主任に家まで送りますよって言い出したんです。七花主任がお疲れのようだったので、無理をしてほしくなくて。それを変な噂に変えないでください。」

一見冷静に見える街風くんだが、若干苛ついているような雰囲気が感じられ、わたしは街風くんに駆け寄った。

「街風くん、わたしは大丈夫だから!そんな噂、気にしてないから!」
「でも、俺が嫌なんです。七花主任が悪者みたいに噂流されてるのが。」

街風くん、、、
何で、そんなにわたしを庇ってくれるの?

「あ、ご、ごめんなさい!ただの噂で、勘違いだったみたいね。」
「すいませんでした、七花主任。」

噂をしていた女性社員2人は、わたしに頭を下げると早足で自分のデスクに戻って行った。

「街風くん、庇ってくれてありがとう。」
「いえ、、、何か、苛ついちゃって。」
「でも、わたしは大丈夫だよ?こうゆうの慣れてるし。」
「慣れなんてないって、言ってたじゃないですか。」
「えっ?」
「覚えてませんか?俺が入社初日の時に話したこと。」

街風くんが入社初日の時、、、

あぁ、そういえば名前の話したんだっけ。

わたしが街風くんと初対面で「街風颯生(つむじ さつき)くんね?わたしは、主任の四季七花です。よろしくね!」と言った時、街風くんは驚いた顔をしていた。

そして、「初めて、最初からちゃんとした読み方で呼んでいただきました。よろしくお願いします。」と嬉しそうに微笑んだのだ。

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