契約の愛で結ばれたのは、まさかの敏腕CEO!?~独占欲滾るスパダリは極上溺愛で囲い離さない~
 茉莉花がお風呂から上がると、客間だという部屋がすっかり寝室のように整えられていた。
 新品のように清潔でふわふわの布団が敷かれ、茉莉花が持ってきた荷物が端に置かれている。

「他に必要な物とかありますか?」
「十分すぎます。ありがとうございます」
「今日は疲れたでしょう。ゆっくり休んでくださいね。それじゃあ、おやすみなさい」

 そのまま立ち去ろうとする颯馬に、茉莉花は思わず「待ってください」と声をかけた。

「どうかしましたか?」

(こんなにありがたいと思っているのに……どうしたら伝わるの?)

「えっと、おやすみなさい。あの本当に……ありがとうございます」

 結局もごもごと感謝の言葉を伝えることしか出来ない。茉莉花は自分が情けなくて俯いた。
 
 すると、柔らかい声で「どういたしまして」という言葉が降ってきた。

「何も遠慮はいりませんよ。ほら、僕達は恋人同士でしょう?」

 おどけたように笑う颯馬に、茉莉花もつられるように微笑んだ。



「僕は正面の部屋にいますから」

 そう言って颯馬が去ると、茉莉花は布団に横になった。

(あー……旅館みたい)

 至れり尽くせりの状況で、もう目を閉じれば眠ってしまいそうだった。

(明日は土曜日……交番って土曜日でもやってるのかしら? 私のアパート、もう住めないのかな……)

 上京し、会社で働き始めてからずっと暮らしていた部屋だ。
 こんな風に住めなくなるなど、想像したこともなかった。

 茉莉花は自室に置いていたスイスの写真を思い浮かべながら眠りについた。


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