契約の愛で結ばれたのは、まさかの敏腕CEO!?~独占欲滾るスパダリは極上溺愛で囲い離さない~
 茉莉花はその時初めて店主の顔を見た。

 スッと通った鼻筋や切れ長の瞳は、冷たそうな印象を与える。
 だが眉を下げて微笑んでいる店主は、一目で良い人だと分かった。

 艷やかな黒髪はきちんとセットされていて、清潔感がある。白いシャツに黒いエプロン姿なのに、気品すら感じられる雰囲気を纏っていた。

(綺麗な人……)

 思わず見とれてしまった茉莉花は、すぐ我に返って頭を下げた。

「あの、申し訳ありません。すぐに出ていきますから」

 カバンを肩にかけ立ち上がろうとすると、遠慮がちに差し伸べられた手に阻まれた。

「落ち着いてください。ね、大丈夫ですから。そうだ、よろしければ一杯飲みませんか?」

 そっと指をさされた先には小さなメニューがあった。

『夜喫茶 星空』

 と書かれたメニュー表には、コーヒーや紅茶、軽食といった言葉が並んでいる。

(喫茶店だったんだ……。夜にやっているなんて不思議なお店ね)

 営業の邪魔をしてしまったのだ。何か頼むべきだろう。
 そう思ってメニューを眺めるが、先ほどまでの恐怖のせいか、頭に何も入ってこない。

 茉莉花は諦めてメニューから目を外した。

「あの……何かおすすめがあれば、それをいただけますか?」
「かしこまりました。ゆっくりしていってくださいね」

 店主は茉莉花にひざ掛けをそっと手渡すと、カウンターの方に戻っていった。
 ひざ掛けをかけると、強張っていた身体がじんわりと緩んでいく。

(暖かい。何から何まで親切な方だなあ)

 

 
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