幼なじみは、私だけに甘い番犬
毎日顔を合わせて、しょっちゅう一緒にご飯して。
小さい頃は同じお布団で寝たり、一緒にお風呂に入った仲だけど。
小学校の高学年になった頃から、スキンシップみたいなことはしなくなったのに。
今何が起きているのか、思考が追い付かない。
ミントのボディソープの香りがふわっと鼻腔を掠める。
拘束された体が、僅かに解放されたと思ったら。
彼の指先が私の髪を一房掬って。
いつもの悪戯っぽい顔つきでもなく、苛ついた時の不機嫌な形相でもなく。
凄く優しい眼差しで、一掬いした髪に口づけをした。
「ッ?!!」
予想もしない彼の行動に戸惑う私は、体が硬直して言葉すら出て来ない。
「毎日髪を触る度に、俺を意識するおまじない」
「なっ……」
今思えば、あれが別れの挨拶だったのかな?と思ったりする。
当時、中学2年から3年に進級する私には、いつもの悪戯にしか思えなかったけれど。
あの日の彼は、いつになく優しかった。
(回想シーン終)