俺様同期の執着愛
「いいえ。特にありません」

 そっけない返事をしてしまった。
 すると彼はなぜか笑顔になり、さらに話しかけてきた。

「君の表情が少し落ち込んでいるように見えたんだ。君は我慢強いから、何か無理していることでもあるのかなと思ってね」

 わずかに腕にぞわっと鳥肌が立った。

 以前の私なら、こんなにささいな変化を見抜いてくれるなんて、紳士的で優しい人だなあって感動していたのに、今はただ冷めた感情しかない。
 特に、彼が私と同じように社内で気に入った女の子に薔薇を渡しているという話を聞いてからはもう、余計に嫌悪感が増している。

「えっと……社内では、声をかけないという約束では……?」

 私はあくまで冷静に、彼が以前に約束したことを口にした。

 彼は付き合っていたときに、絶対に会社関係の場所や人がいる前で私と口を利くことは頑なに禁止していた。
 たとえ昨日デートして楽しく過ごしたとしても、翌日会社で会うと彼はまるで他人のように私と目を合わせることもなく無視していた。

 正直、そのことに多少複雑な気持ちになったこともあったけど、それでも約束だから私は律儀に守っていた。
 それなのに、別れてから声をかけてくるとはいったい、どういうことなのか。

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