俺様同期の執着愛
 トイレに立った私はたまたま別テーブルにいる女性社員に目が留まった。
 あれは、柚葵の元カノさんだ。
 避けたいけど、わざわざ遠回りするのも変だし、そのまま突っ切ってしまおうと思った。

「未空は野菜しか食べないの?」
「だって、あたしラムって嫌いなのよ。この匂いが嫌」
「わかる。けど、食べてみると平気よ」
「無理無理。一生無理。なんでこんなとこ連れてこられるんだろ。カフェ行きたーい」

 私はあまり見ないようにして通り過ぎた。
 わざわざそんな大声で言わなくてもいいのにね。
 美味しく食べている人がまわりにいるのに、あんまりそういうこと考えないんだろうなって思う。
 どうぞカフェに行ってください。

「あっ! ねえ、あなた」

 いきなり声をかけられてしまった。
 びっくりして振り向くと、元カノさんが私を見ていた。

「柚くんの同期ー! 元気?」
「は、はぁ……元気です」

 うわあ、この人めちゃくちゃ酔ってるわ。
 野菜だけ食べて相当ビールを飲んでいるのだろう。それか、相当アルコールに弱いのか、顔が真っ赤だ。

「柚くん、旅行に来てるー?」
「……はい。来てますけど」
「えー、なんであたしに会いに来ないのかな?」

 逆に訊きたいが、なんであなたに会いたいと思うんですかね?

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