俺様同期の執着愛
 ぽかんと口を開けて放心状態の元カノさんとは対照的に真顔の柚葵。
 同僚さんたちが気まずそうに沈黙する。
 周囲が楽しげに談笑する中、このテーブルだけ異様な静寂が漂っていた。
 沈黙を破ったのは柚葵だ。

「じゃあ、俺たちはこれで」

 柚葵は私の肩を掴んだまま、半ば強引に元カノさんのテーブルを離れた。
 助かったけど、それにしてもいつも疑問に思う。
 なぜ柚葵はこうも毎回タイミングよく私の前に現れるんだろう?
 まるで監視されてるみたいな……。
 いやいや、何考えてんの。私も相当酔っているなあ。

「なんでお前が未空さんのところにいるんだよ?」
「呼び止められたのよ。で、柚葵がまだ彼女に未練があるのか訊けって言われて」
「ふーん」
「ふーんって、他人事みたいに……」
「それを言われてどう感じた?」
「えっ?」

 どうって、すごく腹が立ったよ。
 でも、私が腹を立てるような立場じゃないし、どう答えたらいいのか。

「なんで私に言うんだろうって思った。一応、柚葵は違うと思いますって答えようと思ったけど」
「……そっか。なんか、悪かったな。巻き込んで」
「柚葵が謝ることないよ。彼女、すごく酔っていたし、気持ちが高まっていたんじゃないかな」

 ううん、違う。きっと彼女が柚葵に未練があるんだ。
 でも、そんなこと柚葵に言いたくない。

「で、お前どこ行くの?」
「トイレだよ」

 柚葵がさくっと話を切り上げてくれたからほっとした。

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