俺様同期の執着愛
 2日目の夜は温泉旅館の大広間で大宴会。
 畳にずらりと並んだ座敷席には、上司や先輩たちが楽しそうにビールを注ぎ合っている。
 他部署も合同で総勢100人くらいになる。
 正直誰か知らない人もいるけど、こういうときに新しい出会いを求める子たちもいる。
 つまり、毎年社員旅行では、数組のカップルが誕生している。

「ねえ、あの子かっこよくない? 初めての参加かなあ?」
「新人でしょ。年下って言っても4つ下はなあ……」
「関係ないよ。あたし話してくる」
「あ、ずるーい。綾芽も行く?」

 私は「ううん、いい」と言って自分の席に残った。
 料理をほとんど食べ終わると、だいたいみんな席替えしていく。
 さっきまでとなりにいた子たちも行ってしまい、私はぽつんと取り残された。

 そういえば柚葵はどこだろうと思ってまわりを見渡してみると、彼も先輩たちに捕まっていた。
 柚葵は男にも女にもモテるんだよね。
 普段そんなにしゃべらないのに、人気者の柚葵がなんだか羨ましいなって思う。

 この宴会場に男性はほぼ浴衣姿だけど、女性は私服姿と浴衣姿の半々くらい。私も先に温泉に入ったけど、今は私服で参加している。
 柚葵は浴衣だ。
 久しぶりに見たけど、彼は本当に浴衣が似合うなあ……。

「となり、いい?」

 唐突に声をかけられて、見上げると、他部署の男の先輩だった。
 話したことがなくて名前も覚えていない。

「あ、はい。どうぞ」

 断るのもおかしいから、普通に対応をした。

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