俺様同期の執着愛
 私は急に自信がなくなってきた。
 本の通りにしたからとはいえ、自炊歴長い私より、たったひと月で柚葵がこんなに料理ができるようになるなんて。

「え……なんか、この料理出したの恥ずかしくなってきた」
「なんで? いいじゃん。俺、綾芽のメシ美味いし好き。俺よりずっと美味いよ」
「ありがとう。お世辞でも嬉しい」
「ほんとだって」
「角煮作れる人に何言われても響かないわ」
「それ、一番簡単だったぞ。圧力鍋に突っ込んだら勝手にできる」
「圧力鍋買ったの!?」

 柚葵は当たり前とでもいうように頷いた。

 そ、そっか。初心者だから、とりあえず本に書いてあるものを揃えたんだ。

 柚葵は本当に何でもできるんだなあ。
 私って他に何ができるんだろう?
 柚葵のために何かできることってあるんだろうか。
 掃除くらいかな……。
 ううん、でも柚葵は私が初めて家に行ったとき、すごく綺麗にしていたし、やっぱり柚葵はひとりで生きていける人なんだろうな。

「どうした?」
「うん、ちょっと……私の存在価値について考えてる」
「は? お前の存在価値なんて、存在しているだけで神だよ」
「え?」
「綾芽が生きてそこにいるだけでいい。俺のそばにいるだけで価値がある」

 な、なんか、ものすごく熱烈な告白をされた気分。

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