俺様同期の執着愛
【柚葵のターン】

 やってしまった。
 となりで眠る綾芽を見つめながらひとり懺悔をしている。

 いや、めちゃくちゃよかったんだけどな!
 それは俺の場合であって綾芽もそうとは限らない。

「う、ん……」

 綾芽が妖艶なため息を洩らしながらごろんと寝返りを打ち、こちらを向いたその顔に思わずキスがしたくなった。寸前で制御した。

 生殺しだろ、これ。
 正直一回では足りない。なんなら時間延長して朝まで何度もやりたいくらいだったが我慢した。がんばった俺。

 さらっと綾芽の髪を撫でた。
 口は無理でも頬にならいいだろう。そう思って、綾芽の髪をかき上げると頬にキスをした。
 綾芽はぴくりと反応し、その口からぼそりと声を洩らした。

「恭一さん……」

 綾芽の目から涙が伝って落ちた。
 俺はしばらく固まって動けなかった。

 そうか、綾芽はまだあの人に未練があるのか。よく考えたら当たり前だ。ショックで飲みに出歩くくらいなんだし。

 けど、なんか、すげームカつく。

 気づいたら綾芽の顔を無理やり振り向かせて、その唇にキスをしようとした。しかし唇が触れる寸前で、綾芽の言葉がよみがえった。

『じゃあ、なしで』

 ゆっくりと顔を離し、綾芽から少し離れた。

 あーあ、黙ってやっときゃよかった。

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