俺様同期の執着愛
【綾芽のターン】

 し、信じられない。セフレのためにそこまでする?
 でも、柚葵は割とそういうとこ真面目だし、割り切った関係とはいえちゃんとしてくれたんだなあ。
 ていうか、やっぱり今夜はそういうことで私を家に招き入れたんだ。
 まあ、一応心構えはしておいたけど。

「じゃあ、とりあえずお風呂に入ってもいい?」

 着替えを貸してくれるなら早くスーツを脱ぎたい。堅苦しくていい加減に楽になりたいもの。

「え? やだな」

 柚葵はそう言ってあからさまに嫌な顔をした。
 そして、じりじりと私に近づいてくる。しかも真剣な顔をして。

「柚葵……?」
「お前、なんでスーツなんだよ」
「今さら何言ってんの?」
「新入社員研修のときのお前見てるみたいでそわそわするだろ」
「は? ちょっと意味わかんな……」

 壁に押しやられ、柚葵は私の顔の横にとんっと手をついた。
 見上げると真面目な顔をした柚葵の鋭い視線が落ちてくる。私は恥ずかしくなって顔を背けた。そうしたら、彼は私の顎を掴んで無理やり顔を上げさせた。

 ばっちり柚葵と目が合って、その視線に釘付けになり、目がそらせなくて数秒。彼は言い放つ。

「同意をくれよ、綾」

 ずるい。そんな(悔しいけどイケメンの)顔で迫られたら、拒否できない!

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