俺様同期の執着愛
 イタリアンはとても美味しかったけど、私は心から満足できなかった。柚葵は先ほどのことはなかったみたいに話題を変えて明るく振る舞ってくれたけど、ときどき謎の沈黙が訪れた。
 柚葵と気まずい空気になるなんて、今までにはなかったことだ。

 帰りの車の中も会話が進まず、そのまま私は柚葵を送っていこうと思っていた。そのとき、彼が話を切り出した。

「綾、今夜時間ある?」
「え? うん」
「じゃあ、もう少し付き合って」
「いいよ」

 妙にドキドキしてハンドルを握る手に力が入る。
 こんなときでも私たちはそういう関係だから、そういうことをするのだと思った。
 今はそんな気になれなかったけど、私は断ろうとは思わなかった。

 柚葵が指示する方角へ向かっていくとだんだんサッカーのユニフォームを着たサポーターたちが歩いているのを見かけた。その先にあるのはスタジアムだ。

「え、まさか」
「そ。俺、女と来るの初めて」
「そうなの?」

 そっか。元カノさんは興味なさそうだもんね。
 そっかあ、私が初めてなのかあ。
 なんでこんな、嬉しいんだろ。

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