俺様同期の執着愛
「勝手にキッチン使うよ」
「おう、いくらでもどうぞ」

 柚葵は声が沈んでいるけど発言はいつもどおりだ。
 発熱してつらそうなのに、私は少し安心してしまった。

 冷蔵庫を開けると卵が少しと牛乳とビールの缶。それからヨーグルトがあった。野菜室はほとんど空だったけど、よくわからない物体があった。
 たぶん腐ってる。いや、腐ってる。確実に。
 すぐさま処分しておく。

 野菜買ってきてよかったあ。

「お粥食べる? それとも雑炊を作ろうか? 野菜スープでもいいよ」

 鍋を取り出していると、対面カウンター越しに柚葵が遠慮がちにこちらを見ていた。私が買ってきたみかんゼリーを食べながら、じっと目線はこちらにある。

「ん? どしたの?」
「いや、こうして綾が俺んちのキッチンに立っているのを見ると、あれだな。まるで……」

 柚葵は言いかけてわざとらしく間を置く。
 まさか、まるで彼女とか言われるんじゃ……などと思っていたら。

「母ちゃんみたい」
「なっ……こんなデカイ息子持った覚えないわ!」

 私は心底がっかりした。ちょっと顔が熱くなっちゃって恥ずかしい。
 やだやだ、私。変に期待して損した。

 ん? 私は、期待していたの――?

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