俺様同期の執着愛
【柚葵のターン】

 綾芽が俺の家のキッチンに立ってる。
 俺のためにメシ作ってる。
 夢にまで見た光景だ。

 俺は綾芽が買ってきてくれたみかんゼリーを口にしながら彼女の姿をじっと見ていた。
 
 実は発熱で倒れても別に動けないほどではない。 
 腹が減ったら適当に出前でも取るし、薬がなけりゃAmmzaon⤴で買えばいいし、あとは寝転んでスマホゲームでもしてりゃそのうちよくなる。

 ひとり暮らしなんてこんなもんだろ。

 だがしかし、なぜか、綾芽がそこにいると、無性に甘えたくなる。
 弱った姿を見せたくなる。
 かまってほしくなる。
 カッコ悪ぃのわかっていても素をさらしたくなる。

「寝てなくて大丈夫? しんどいでしょ? 座ってていいよ」

 綾芽はてきぱきと野菜を切って鍋に入れながらそう言った。

「いや、平気」

 何が平気なんだよ、俺。
 足下ふらついてるぞ。
 でも、綾芽がそこにいるのに、寝ているのがもったいない。

 料理をしている綾芽の姿を上から下までじっと見つめた。
 まつ毛の長い目もととか、艶やかな唇とか、ピンクに染まった頬とか、髪をかきあげたときに見えた形のいい耳とか、すらっとした首筋とか、壊れそうなくらい細い指とか。

 ――触りたい。

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