【シナリオ版】キスで溺れる同居生活〜年下御曹司は再会した幼なじみを愛し尽くしたい〜

第6話.覚悟してて



○三年D組の教室
教室で本を読んでいる綴。


綴「うーーん……」
紗良「つづりーん。さっきから何読んでるの?」
綴「反抗期との向き合い方」
紗良「何それ!? そんな本あんの!?」
綴「やっぱり何事も勉強かなって……」
紗良「反抗期って誰が?」
綴「……あやくん」


かくかくしかじかで紗良に説明する綴。


紗良「いやちげーし! それ絶対つづりんのこと好きだから!!」
綴「えっ」
紗良「大体ちゅーするって……!」
綴「わーーっ!! 紗良ちゃん声大きい!!」


紗良の口を押さえる綴。


綴「昔から距離近かったから今もバグってるだけだと思う」
紗良「えー? そうかな〜?」
綴「仮に好きでも、あやくんの好きは幼なじみとしての好きなんだよ」
紗良「……なんかつづりんさぁ、そーやって言い聞かせよーとしてない?」
綴「!」※図星
紗良「そもそも幼なじみとしての好きって何?」
綴「えっと、それは……」
紗良「……まあ、気持ちはわかるけどね。つづりんママのこともあると思うし」
※紗良は綴の過去を知っている
綴「……」
紗良「ウチはつづりんの味方だからね」
綴「……うん、ありがとう」
紗良「じゃあさー! 久々にプリ撮ろ!」
綴「いいね! 撮りたい!」


○放課後・プリ機
ギャルピースでプリを撮る綴と紗良。


綴「私D組に落ちてきて白い目で見られてたけど、紗良ちゃんが友達になってくれて嬉しかった」
紗良「ウチもだよ。こんなカッコだから浮きまくりだったけど、つづりんは褒めてくれてめっちゃ嬉しかったし!」
綴「だって紗良ちゃんがすごくかわいかったから」
紗良「それはつづりんもじゃーん!」


ぎゅーっと綴にハグする紗良。


○カフェ
フラペチーノを飲む紗良とジュースを飲む綴。


紗良「ぶっちゃけさぁ、ちゅーされてどう思ったん?」
綴「!?」


ゲホッとむせる綴。


綴「ど、どうって……!」
紗良「そこ大事なとこでしょ〜」
綴「ん〜〜……びっくりした」
紗良「じゃなくてぇ、嫌じゃなかったん?」
綴(そういえば、嫌ではなかった……?)
綴「嫌、ではなかったかも」
紗良「おっ」
綴「なんてゆーか、構って欲しいわんちゃんに舐められた感覚」
紗良「犬扱い!?」
紗良(うわぁ……王子かわいそ〜)
綴「……うん、多分そう。あやくんは構って欲しかったんだよ。ああ見えて結構甘えんぼだったから」
紗良「高校生になっても?」
綴「うっ」
紗良「つづりんの気持ち、わからなくないけどさ。そーやって見ないフリしてると、後で後悔するかもよ?」
綴「そう、かな……」


〜回想・三年前〜
綴【会社が倒産した直後からお母さんの態度が変わった】

綴母『どうしてこうなるの!? こんなはずじゃなかったのに!』
綴父『すまない……僕が不甲斐ないばかりに』
綴母『本当よ! こんなことになるなら、あなたとは結婚してなかったわ!』

綴【それからしばらくしてお母さんは別の男性と共に家を出た。あっさりと私とお父さんを捨てて。
お父さんはお母さんを責めず、私に何度も謝った】

綴父『すまない、綴。お父さんが何もかも悪いんだ。どうか母さんを責めないでくれ』
綴『……大丈夫だよ、お父さん。これからは二人で頑張ろうね』※ニコッと

綴【つらいのはお父さんも同じ。これからは二人で前を向いて頑張ろうと思った】


〜一年前・ファミレス〜
ファミレスでアルバイトをしていた綴。シフトを終えて帰ろうとした時、先輩(男)に声をかけられる。


先輩『千歳さんのことがずっと好きだった。良かったら付き合って欲しい』

綴【人生初の告白だった。正直言ってとても嬉しかった。でも……】

母を思い出して青ざめる綴。

綴『っ、ごめんなさい……』


頭を深々と下げる綴。


綴【怖かった。先輩のことを好きになったとしても、お母さんみたいにいつか離れていってしまうかもしれないと思ったから。
また捨てられるんじゃないかって――】


青ざめる綴に舌打ちする先輩。


先輩『チッ、ちょっとかわいいからってお高く止まりやがって』


綴【その後気まずくなってファミレスのバイトは辞めたんだよね――……】


〜回想終了〜

○帰り道
紗良と別れてため息を吐きながら帰路につく綴。


綴(はあ、やなこと思い出しちゃったな……)


スマホにメッセージが届く。


綺世《今どこ?》
綺世《迎えに行く》
綴《学園近くのカフェだよ》


迎えに来てくれるというメッセージにキュンとする綴。


綴(あやくん、コンビニのバイトの時も必ず迎えに来てくれるんだよね。嬉しいけど、なんか私がお世話される側になってるような……?)


○数分後
綺世「つづ」
綴「あやくん!」
綺世「帰ろ」


ん、と手を差し出す。


綴「えっと……?」


戸惑う綴の手を取って握りしめる綺世。


綺世「ほら、帰ろ」
綴「……っ」※ドキッと
綴(手、大きいな……)

綴【大人っぽくなったと思ったら、弟みたいにかわいい一面もあるあやくん。優しいのに時々イジワルだったりもして、本当は再会してからずっとドキドキしてる。
でも……、】


ハッとして何かに気づく綴。


綴「え…………」


向かい側の道を歩く男女二人。男性に寄り添って歩く女性は綴の母。


綴「お母さん……?」
綺世「え……」


綺世も綴の母に気づく。母は全く気づかず、笑いながら男性と共に去ってしまう。


綴「……っ」


綺世の手を振り解き、駆け出す綴。


綺世「つづ!!」


綴を追いかける綺世。


○公園
走り続けて公園にたどり着いた綴と綴を追いかけてきた綺世。綺世が綴の腕を取る。


綺世「つづ、待って!」
綴「……っ」


振り返った綴のアップ。大粒の涙を溜めている。


綴「お母さん、出て行った時とは違う男の人と一緒だった」
綺世「え?」
綴「お父さんの他に好きな人ができたと思ってたのに、もう別の彼氏がいるんだ」
綺世「つづ……」
綴「お母さんはね、お父さんが社長だったから結婚したんだって。社長じゃなくなったから、お父さんのことも私のことも捨てたの……」


ボロボロと泣きじゃくる綴。


綴「それでも私は、お母さんが大好きだったのに……っ」
綺世「――っ」


綴の腕を引き寄せて抱きしめる綺世。
綺世に抱きしめられながら、泣き続ける綴。


綴「っ、こわいの……っ。誰かを好きになっても、お母さんみたく離れていっちゃうんじゃないかって……私なんて、また捨てられるんじゃないかって……っ」
綺世「そんなことない!」


抱きしめる力を強める綺世。


綺世「俺は初めて会った時から、ずっとつづのことが好きだった。その気持ちは今も変わってないよ」
綴「……っ、だめ!」


綺世を押し出して離れる綴。


綴「だめだよ……私たち、幼なじみでしょ?」
綺世「俺は幼なじみのままじゃやだ!」
綴「幼なじみのままなら……っ、これからも一緒にいられるじゃない……っ!」
綺世「つづ……」


綴【本当は、心のどこかではあやくんの気持ちにも自分の気持ちにも気づいてた。でも気づかないフリをしてフタしようとしていた】
綴【私は怖いんだ、幼なじみという関係が壊れることが】
綴【あやくんまで失うことになったら、私は――……】


ボロボロと泣きじゃくる綴。
そんな綴を見つめて、ぎゅっと拳を握りしめる綺世。


綺世「つづ、俺はそれでも今のままは嫌なんだ」
綴「!」
綺世「幼なじみも弟もやだ。俺はつづの彼氏になりたい」
綴「あやくん……」
綺世「つづがお母さんのことで怖くなる気持ちはわかるよ。それだけ傷ついたんだよね」
綴「……っ」
綺世「でも、俺とお母さんは違うよ。俺は絶対つづから離れないし、この先一生離すつもりもないから」
綴「え……」


綺世のストレートな告白に思わずドキドキしてしまう綴。


綺世「これからは何があってもつづの一番近くにいる」
綴「あやくん……」
綺世「だから、俺のこと信じて。俺のこと、男として見てよ」


真剣な表情の綺世のアップ。
綺世がかっこよくて目が合わせられず、目を逸らそうとする綴。
綴を引き寄せて瞼にキスを落とす綺世。


綴「ふえっ!?」
綺世「涙引っ込んだ?」


イジワルっぽく笑う綺世。


綴「〜〜っっ」
綺世「覚悟してて。これから愛し尽くして溺れさせてあげる」
綴「あ、あやくん……っ」
綴(今でもずっとドキドキしてるのに……どうなっちゃうの!?)
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