異世界転生した先は断罪イベント五秒前!
 流行っていた乙女ゲームへの転生に、断罪イベント。私はいつもそのストーリーに違和感を持っていた。目覚めたらよく知る乙女ゲー世界。シナリオをなぞれば大好きなキャラとイチャイチャできると知っていたなら……そこを避けようとするだろうかと。シナリオに断罪イベントが組み込まれていたのなら、乙女ゲーマーとしてなぞるでしょう、普通。それもある種の聖地巡礼だ。

 ――だから、目の前の彼女も悪くないと思う。

 でも、罪悪感は持ってもらいましょう。そうでなければきっと、私が幸せになれない。

「チェルシーさん。実際には、私からたいした嫌がらせは……されていないわよね? 悲劇のヒロインを装わなくたって、あなたなら愛してもらえるわ。ねぇ、アーロン様!」
「え……いや……」

 あれ、アーロン様がやや引いた目で私たちを見ている。疑惑の芽を植えつけすぎたかな。

「アーロン様の恋、全力で応援しますわ! 婚約破棄を受け入れます。むしろ望んでいましたわ。彼女はあなたと育んだ恋に浮かれて、つい令嬢らしからぬ言葉を発してしまっただけ。若かったのよ、許してあげて。反省をしてこそ人は成長するものよ」
「ま、待ってくれ。少し頭を……」

 やめて、頭は冷やさないで。
 このまま婚約を継続するのは私が困るのよ。現実かどうか分からないけど、この状況で私がゲームとは違って幸せを手に入れるには、私の評判を落とさずに断罪イベントを発生させたコイツとの婚約破棄を成立させなくてはならない……ような気がする。

 ――パチパチパチパチ。

 シンとした会場に拍手が鳴り響く。
 出処は第二王子のレヴィアスだ。

 藍色の髪と瞳。イケメンだけれど、いかにも腹黒いですという顔をしている。国王陛下と正妃の息子でアーロンと王位継承権を争っている。各方面からの支持のより大きい方へ継承をするという、陛下の意志によるものだ。
 実はどっちの王子も王位を欲しがってはいないものの……それはゲームで彼らのルートを辿らなくては分からないし、表には二人ともそれを出してはいない。特にレヴィアスは強く望んでいるような雰囲気を普段は出している。建前ってやつだろう。
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