異世界転生した先は断罪イベント五秒前!

3.秘密の扉

「君と仲を深めたいんだ」

 放課後、レヴィアスに話しかけられた。

「……未だ婚約したままの身で、他の男性と二人きりになるのは……」

 お構いなしに肩を抱かれる。
 
 近いって……!
 私には刺激が強すぎる。どうしてこうなったのか。

「このまま兄上と結婚してしまうの? あんなことがあったのに?」
「それは……」
「夢と言われたって誰も忘れてはくれない。君が助かる方法は一つだ。恥をかかされたままではいられない、私と結婚したいと言ってくれるだけでいい。そのようにすぐに動こう。あの場で王妃に相応しいのは君だと誰もが思った。私は君を逃すつもりはないよ。父上だって拒否はできない。円満に君と兄上の婚約は解消される。他の貴族だって、そうなるだろうと思っているよ」

 ……一緒に踊ったしね。
 
「正直に言えば……逃げたいわ。どちらにも愛がないもの」
「はは、愛……って」

 馬鹿にしたように笑われる。
 でしょうね、そーゆー男よね。

 肩を抱かれたまま、男子寮の裏へと連れ込まれる。

「私、もう戻っていいかしら」
「まだ駄目だ。君にいい場所を教えたいだけだよ」

 彼が関係者しか入れない裏口の扉を開ける。この先がどこに繋がっているか知っているだけに……まぁいいかとも思ってしまう。

 彼は寮長だ。
 面倒くさい作業を全て副寮長に任せる寮長。だから関係者だけが通れるこの扉の鍵を持っている。まさに、女性向けエロゲー設定といった感じだ。

 中に入るとやや薄暗い。すぐに彼が鍵を閉めると、私を壁に押しつけた。

「……婚約者のいる女性にこれは、スマートとは言えないわね。王子様のくせにマナーがなっていないわ」
「こんなよく分からない場所に文句も言わずノコノコ付いてきたんだから、襲われる覚悟くらいしていただろう」
「……! も、文句は言ったわよ。私への愛のなさを信じていただけ。何もするわけがないと」
「愛……そんなもの、婚約したらいくらでもあげよう」
「ないものは生み出せないわ」

 この通路……あそこへと続くと知っていたばかりに、よく分からない場所にノコノコ付いてきた女になってしまったのか……。
 
「依存させてあげよう。私は裏切らないよ、愛人なんてつくらない。つくらなくて済む女を探していた」

 色気を漂わせながらそう言われる。
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