しゃべりたかった。

4

春休みがおわり、今日はついに入学式。
 卒園式と同じように有紗の髪の毛をハーフポニーテールにして、オシャレをさせて、小学校へ向かった。
 車はダメとのことなので、歩いて行った。
 有紗を見ると、緊張してるのが読みとれた。
「だいじょうぶだよ。」
 とわたしは安心させるように言ったが、わたしも緊張していた。
 小学校は家からさほど遠くない。ただ、学校が坂の上にあるので、坂を登らなければならない。急じゃないけど、けっこう疲れる。
 小学校の門まで着て、有紗と門を撮った。
 そして、体育館へ行く。
 わたしは用意されている親用のイスに座り、有紗は前の子ども用のイスに座った。
 ちょっとすると、入学式が始まった。
 まず校長先生の話。
 練習をしていないのに返事ができていて、すごいなあと感心して見ていた。
 次に学校の説明。こんな場所があるんだよ〜とか、そんな感じ。
 入学式がおわり、いよいよ教室へ。
 有紗と共に教室へ入り、有紗を席に座らせた。
 担任の先生は優しそうな女の先生で、わたしはほっとしていた。
 次に支援級の方へ行った。やっぱり普通のクラスじゃ不安なところがあって、支援級に入ることにしていたのだ。何度か見学に来てよさそうだったし。
 支援級のお友だちは女の子1人と男の子1人で、担任の先生はベテランの優しい女の先生だった。どちらもいい先生で、わたしはほっとした。
 説明や物を配ったりして、もう帰る時間。
 有紗を連れて、学校を出た。
「どうだった?」
 と聞くと、
「疲れたあ。」
 と言っていて、わたしは笑ってしまった。
「そうだよね。」
 わたしもなぜか疲れていた。
 歩いて家へ帰り、頼んでおいたお寿司を食べた。
「いやあ、ついに有紗も小学生かあ。時の流れは早いなあ。」
 お寿司を食べながらお父さんが言った。
「本当ね。そうだ、今日の写真見る?」
 わたしが聞くと、2人が頷いたので、食事中だけどスマホを持ってきた。
 写真を見せると、お父さんは有紗をかわいがって、有紗は恥ずかしそうにしていた。
 スマホを置いてあったところへ戻し、つづきを食べる。
 わたしはお寿司ではマグロが好き。とくに大トロ。有紗はエビが好きで、お父さんはいくらが好きとバラバラ。まあ、お寿司が好きっていうのは同じだけど。

 夜、有紗が寝たころ、お父さんを呼びだして話していた。
 内容はもちろんこれからの有紗のことだ。
「学校、行けるのかな……」
 不安げにそう言うと、お父さんが言った。
「だいじょうぶさ。もし行けなくたって、そこまで大変でもないし。色々方法があるんだしさ。」
 お父さんの言葉にわたしは救われた。
「それもそうね。」
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