好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~
~風里~

バレンタインを明日に迎えた今日。



家に帰ると姉ちゃんがキッチンで何やら作ってた。



「あ、おかえり風里」

「ただいま。何つくってるの?」

「ガトーショコラ~。あとであげるよ」

「俺もあとでキッチン使いたいんだけどもう終わりそう?」

「うん、あとちょっと」



バレンタインか~。



小糸ちゃんも今日「明莉と帰る!」と言って一緒に帰ってくれなかったのは多分家でバレンタインのチョコ作ってくれてるんだろう。



楽しみだな~。



それからしばらくして姉ちゃんの作業が終わり、仕事が休みの父さんがキッチンで夕食を作ってくれた。



家族みんなで席に着いたところで、姉ちゃんがみんなの注目を集めた。



「はい、明日あたしいないからみんなに一足早いバレンタイン~」



そう言って、ラッピングされたガトーショコラを母さん、父さん、俺に配る。



「ありがと。明日いないの?」

「うん、渚と授業終わってから旅行行く」

「へ~。どこ行くの?」



行先はこの前俺と小糸ちゃんがこの前行ったところの隣の県だった。



それを何気なく言ったら、姉ちゃんが怒り始めた。



「本当に風里はずるい、あたしは高校生のとき彼氏と旅行ダメって言われてたのに!」



ああ…それを言うのね…。



知らないよ…。



「高校生のときのあんたは渚と出会うまで変なのとばっか付き合ってたから、ハメ外しそうで全然許せるわけなかったんだよ」



母さんが言った。



姉ちゃんは頬を膨らましてる。



「えっ…陽鞠ってそうだったの…?」



父さんが若干ショックを受けた顔をしてる。



そっか、父さんは知らなかったのか…。



高校生のときの姉ちゃんの奔放ぶり…。



姉ちゃんは「あ」という顔。



母さんはケラケラと笑ってる。
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