好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~
帰りたくないなあ…。



それは先輩も同じだったみたいで、2人でなんとなく遠回りしながらゆっくりと歩いた。



いつもより先輩にくっついちゃおう…。



手をつなぎながら先輩の腕にぴとっと寄り添うと、先輩が「ふふ」と笑った。



「かわいいね?」

「そんなことないです…」

「かわいいよ。もっとくっついて」



先輩がそう言ってあたしのことを引き寄せた。



ちょっとよろめくあたしをやっぱり優しい顔で見てる先輩。



こんな幸せがずっと続いたらいいのに…。



だけど家には着いてしまうもので。



先輩がマンションの前であたしをぎゅーっと強く抱きしめた。



あたしも抱きしめ返す。



それから先輩がきょろきょろと周りを見渡してから、あたしの唇に一瞬ちゅっとキスした。



「じゃあね、寒いから早く入って」

「はい…」



あたしは名残惜しく先輩のほうをちらちらと見ながらマンションの中に入った。



先輩はあたしのことをギリギリまで手を振りながら見送ってくれる。



はあ…。



なんて幸せな誕生日だったんだろ…。



先輩が見えなくなってから、自分の家までの廊下を歩く。



「ただいまー」



なんだかまだ夢心地のまま家に帰った。



「おかえり、小糸ちゃん」



えっ…。



幸せ一色のあたしを待っていたのは、突然の出来事だった…。



なんで市川さんがいるの…。



今日来るなんて聞いてない…。
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