好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~
「小糸の誕生日祝いに来てくれたのよ」



お母さん…。



あたし、たしかに前より市川さんへの拒否感は薄れたよ。



だけど、まだまだあたしは受け入れられてないよ…。



連絡もなしに、あたしの特別な日に、こんな風に市川さんに会うなんて望んでない…。



何よりも、そのことに気が付いていないお母さんが悲しかった。



年末の一件だけであたしが全部受け入れたと思ってるの…?



幸せだった気分がぶち壊しだよ…。



そのとき、ちょうどあたしのスマホに連絡が入った。



お父さんからだ…。



『小糸、16歳の誕生日おめでとう』



お父さん…。



なんだか一気に耐えられなくなった。



あたしの中にはまだ小さい子供がいて、頭では慣れたつもりでも、その小さい子供は親の離婚もまだ受け入れられてなくて、お父さんお母さんと泣き続けてる…。



だけど市川さんとお母さんにそのことを悟られるのも嫌で、あたしは唇をきゅっと結んだまま頑張って口角を上げた。



でも無理…。



今は一緒にいたくない…。



「ちょっと出てくる…」

「えっ?」



あたしは家から飛び出た。



いつもの公園に向かって歩く。



悲しい、つらい、苦しい。



先輩…。



先輩に会いたい…。



何も考えず、歩きながら先輩に電話した。



すぐに出てくれる先輩。



≪どうしたの?≫

「先輩…。今すぐ会いたいです…っ」



言ってるうちに涙が出てきた。



≪えっ…どうしたの? いま家?≫

「いつもの…っ公園です」



あたしがそう言っている間に、向こう側から足音が聞こえてきた。



先輩だ…。



電話を受けてすぐ引き返してくれたんだ…。
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