好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~
「小糸ちゃん、お風呂入ってく?」



結くんのお母さんが聞いてくれる。



「いいの? 入る~!」



こんなことも日常茶飯事。



結くんとは兄妹みたいにして育ったかな。



「結くんって好きな人とかいるの?」



お風呂上がりに結くんに聞いてみる。



「突然なんだよ」

「いや~、さっき好きな人に好きって言っちゃってさ」



あたしがそう言うと、結くんがびっくりした顔をした。



「俺と別れてからこの家にまた来るまでの間にいったい何が…」

「だよね、あたしもびっくりした」

「だれ?」

「昨日会った先輩覚えてる? あの人!」



あたしがそう言うと、結くんは「ああ…」とため息をついた。



どうしたんだろ…。



「変な奴じゃないよな?」

「全然違うよ!」

「ならいいけど…」



なんか納得してなさそうな顔…。



風里先輩のこと嫌いなのかな…。



「なんで嫌そうなの?」

「…なんかチャラついてそうじゃん」



そうかな…。



全然そんなことないと思うけど…。



それから結くんに家まで送ってもらって家に入った。



結構遅くなっちゃった…。



「ただいま」

「おかえり~…」



お母さんはリビングのソファでうたたねしてたみたいだった。



あたしのことを待ってたっぽい。



ねえお母さん、なんで『遅くまでどこ行ってたの』とか聞かないの?



聞いてほしいわけじゃないけど…。



なんか寂しい…。
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