雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜

立ち止まっている俺を見て、凌大が傍で支えてくれた。
凌大には感謝してもしきれない。凌大が居たから今の俺があると思っている。
どんなに上手くいかなくても、何度も果敢に挑戦したが、結局転職活動は上手くいかず。
さすがにこのままでは生活がままらない。方向転換をしようかと悩んでいたその時、ふとこんなことを考えるようになった。自分で会社を立ち上げようと。
知識なんてないし、上手くいく自信なんてない。でもこのまま立ち止まっているのが嫌だと思った。

凌大に相談した。凌大なら客観的な意見を言ってくれるであろうという信頼があったから。
普通に考えたら反対されるに決まってると分かった上で相談した。
でも凌大は違った。反対せずに賛成してくれた上に、一緒に起業してくれると言ってくれた。
とても心強かった。そして俺は凌大と共に会社を立ち上げた。

最初は会社を上手く立ち回らせることに必死で。会社が倒産しないようにひたすら頑張った。
頑張った結果、会社は徐々に規模を拡大していき、軌道に乗るようになった。
これでようやく過去と断ち切れたつもりでいた。そんな時に奈緒と出会った。

奈緒と初めて出会ったのは偶然、仕事の帰りに立ち寄ったドラックストアでだった。
最初は気にも留めていなかったが、同じドラックストアで何回か見かけることが多く、次第に気になる存在になっていた。
気になるとはいっても、恋愛的な意味は一切なく。ただよく見かける人だった。

まさかよく近所で見かけていた人と偶然ぶつかり、その人に偽装とはいえども結婚を申し込むことになるなんて思ってみなかったが、今思えばこの時から俺は奈緒に惹かれていたんだと思う。
奈緒への想いを自覚したのは、結婚してしばらく経った頃のことだった。
仕事を終えて帰宅したら奈緒が倒れていた。とても焦った。もし奈緒がこのまま目を覚さなかったらどうしよう...。
その時、初めて自分の気持ちを自覚した。どれだけ奈緒が好きなのかと。
出会って間もないし、お互いにお互いのことをまだよく知らない。
それでも奈緒のことが好きだ。偽りの関係から始まったが、奈緒とのこの関係を壊したくない。できればずっと夫婦でいたい。
自分の気持ちを自覚した途端、奈緒が俺のことをどう思っているのか気になり始めた。
もし奈緒も俺のことを好きだったら嬉しい。そうであってほしいと願っている。
奈緒の気持ちが全く分からない。寧ろ俺に好意を抱いているようには思えない。
どうしたら奈緒が意識してくれるのだろうか。そう思えば思うほど、無意識に身体が動いてしまう。
奈緒に迷惑をかけていると分かっていながらも、奈緒に意識してもらうために俺は必死にアピールをした。