雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
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次の日、目を覚ますと、隣に悠翔さんの寝顔があった。
昨日は確認する余裕なんてなかったので気がつかなかったが、どうやらここは悠翔さんの寝室みたいだ。
今まで掃除でお邪魔することは何度かあったけれど、こうして悠翔さんの部屋でゆっくり過ごすのは初めてのことだ。
なんだか悠翔さんの匂いがする。とても良い匂いで。落ち着く匂いだ。
「おはよう、奈緒…」
悠翔さんが目を覚ました。寝起きで掠れた声の悠翔さんはとてもセクシーだ。
「おはようございます、悠翔さん…」
「奈緒さえ良ければなんだが、もう敬語で話すのはナシにしないか?」
ずっと悠翔さんとは敬語で話していた。悠翔さんが年上だから、その方がいいと思っていた。
それに今まで偽装結婚ということもあり、遠慮していた部分もある。
でもこれからは違う。遠慮する必要がない。本物の夫婦になったのだから。
「悠翔さんさえ良ければ、敬語はナシで喋らせてもらいたいです…」
「俺から提案したんだから、ダメってことはない。寧ろそうしてくれた方が嬉しい」
もしかして悠翔さん、ずっと気にしていたのかな?私が敬語で話していたことを…。
だとしたら今すぐに敬語を止めた方が、悠翔さんは喜ぶかもしれない。
今までずっと敬語で話していたので、いきなり完全に敬語をなくすのは難しいが、できるだけ敬語で話さないように善処したい。
「分かりました。それじゃタメ口で話しますね。名前も呼び捨ての方がいいですか?」
「できれば呼び捨ての方が嬉しいけど、名前はさん付けのままでもいいよ」
今までずっとさん付けで呼んでいたので、さん付けで呼ぶことに慣れている。
それに悠翔さんは年上なので、さん付けで呼んだ方がいいと思っていた。
でもどうやら違ったみたいだ。悠翔さんが嬉しいと思っている方を私は選択したい。
「それじゃ名前も呼び捨てにします。改めてよろしく、悠翔」
ずっと敬語で喋り、さん付けで名前を呼んでいたので、改めてタメ口で喋り、呼び捨てで呼ぶことに違和感がある。
でも少しずつ慣れていけばいい。いつか当たり前に思う日が訪れるから。
「…奈緒、こちらこそ改めてよろしくな」
ベッドの上で微笑み合いながら一緒に朝を迎える…。そんな日が訪れるなんて思ってもみなかった。
ただこういう時間を一緒に過ごせるだけで、本当に幸せだ。