雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
「はい。悠翔からお話は伺っております。以前、お付き合いしていたと…」

「先日は失礼致しました。突然、お宅にお伺いしたこと、そして既に結婚していたことを知らずに復縁を迫ったこと、何もかも申し訳ございませんでした…」

事情が事情なのもあるが、元恋人が結婚していることを知らなかったのだから仕方がない。

「小百合さん、顔を上げてください。小百合さんは今でも悠翔のことが好きなんですよね?」

私は逃げずに向き合った。ここで逃げたら、小百合さんの後悔がずっと残ってしまう。
今の私にできることは、小百合さんの後悔を断ち切ること。未練を残してしまえば、前へ進むことができない。
じゃないと、ずっと過去に囚われたまま、生きていかなければならない。
小百合さんもきっと同じ気持ちなのであろう。だからこの場を設けたのかもしれない。

「奥様の前でこんなことを言うのは憚れられるかもしれませんが、今でも悠翔のことが好きです」

小百合さんは自分の気持ちに正々堂々と向き合い、ちゃんと自分の気持ちを伝えてくれた。
私は小百合さんの想いをまっすぐに受け止めた。今、私が受け止めないと、小百合さんは前に進めないから。

「だから悠翔の元に会いにきたんですよね?想いを伝えるために…」

「はい、そうです。悠翔と別れたことをずっと後悔していました。別れたくなかったのに、悠翔と別れてしまって。ずっと後悔したままどうしたらいいのか分からず。悠翔への想いを断ち切れないまま、親に紹介された人とお見合いをしたんですが、それでもやっぱり悠翔のことが忘れられなくて…。もうどうしたらいいのか分からなくなってしまい、あの日、悠翔の家へ伺いました」

小百合さんの切実な想いが伝わってきた。その想いの強さに、私の心は胸が痛んだ。

「インターフォンを鳴らしたら、女性の声が聞こえたので戸惑いました。最初は部屋を間違えたのか、もしくはもう違うマンションに引っ越したのかなって思いました。でもすぐに気づきました。悠翔が結婚しているんだと…」
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