雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
「奈緒が嫉妬してくれるの嬉しいな。でも同時に不安にさせたくないけどね」

悠翔はいつだって私を第一に考えてくれる。悠翔の優しさがちゃんと愛情として心に染み渡る。

「だから奈緒、結婚式を挙げないか?」

ずっと結婚式を避けてきた。今までは偽物の夫婦だったから。
でも今は違う。結婚式を挙げることを躊躇う必要がない。

「悠翔さえ良ければ挙げたい」

私には結婚式を挙げるための費用を捻出することができないので、悠翔任せになってしまう。

「もしかして、お金のことを気にしてる?そんなの全然問題ないから、奈緒は気にしなくていいよ」

さすが悠翔だ。私の心を見透かされていた。

「やっぱりバレてた?悠翔がそう言うのなら、お言葉に甘えて結婚式をしたいです」

「それじゃ今度の週末、式場を見学しよっか。俺の方で式場を何軒かピックアップしておくから」

そう言って、悠翔はすぐに式場見学の手配を始めた。悠翔の結婚式に対するやる気が充分に伝わった。
こんなにも深く愛してもらえて、私は本当に幸せ者だ。

「式場の件は悠翔にお任せするね」

この間まで偽装結婚をしていたのが嘘みたいに、偽装結婚を解消した途端、急激に事が進んでいく。
結婚式はとっくに諦めていた。もう絶対にしないのだと思っていた。
でもこうして本当に結婚式が挙げられるのだと思うと嬉しかった。
式場の下見に行くのを楽しみに、週末を待った。


           *


待ち望んでいた週末を迎えたので、悠翔がピックアップしてくれた式場へ下見へ行ってきた。
どの式場も素敵で。どの式場にしたらいいのか分からなくなってしまった。

「奈緒はどの式場が良かった?」

「うーん、かなり迷ってる」

「どの式場も良かったからね。俺も迷ってる」

悠翔も迷っているみたいだ。それぐらいどの式場も本当に良かった。

「迷っちゃうね。どうしよっか」

二人で一緒に考えたが、答えは出なかった。
また次の週末に別の式場も下見に行ってみることにした。

「奈緒は結婚式で何がしたい?」

結婚式でしたいこと…。考えたことすらなかった。
子供の頃に一度だけ親戚の結婚式に参加したことならあるが、大人になってから友達の結婚式に呼ばれたことがないため、結婚式って具体的に何をするのかが分からない。
< 129 / 151 >

この作品をシェア

pagetop