雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
それでも頑張って気持ちを切り替えて家事に勤しんだが、肝心の悠翔さんが帰ってこない。
最近仕事が忙しいらしく、いつも帰りが遅い。休日出勤もしているので相当忙しいみたいだ。
遅くまで働いている悠翔さんの身体も心配だが、広い家に一人で居るのが寂しく、悠翔さんの帰りをひたすら待った。

最初のうちは悠翔さんが帰ってくるまでずっと待っていた。
でも悠翔さんに、「待たなくていいから先に食べていてくれて構わない」と言われてしまったので、それからはあまりにも遅い時は待たずに先に食事を済ませている。
それでもせめて帰りだけは待とうと思い、待ってみたこともあったが、悠翔さんに、「待たずに先に寝ててもいいよ。奈緒も疲れてると思うから」と言われてしまい、そろそろ私も限界を感じていたので帰りを待つのも止めた。
その代わり朝食は一緒に食べている。その時間がとても貴重で。悠翔さんと一緒に居られるだけで嬉しかった。

休日出勤をしているとはいえども、日曜日だけはお休みなので悠翔さんもお家に居ることが多い。
でも悠翔さんは自室に篭っているため、食事の時間以外は一緒に過ごすことはない。
そこで初めて気づいた。契約結婚の意味を。そして私は甘い夢を見ていたのだと。
あくまで求められる場面でのみ夫婦を演じるのであって、求められていない場面では他人も同然だ。
結婚する前の方が優しかったのに、結婚した途端、赤の他人のように振る舞われ、心に大きな衝撃が走る。
これからずっとこうやって暮らしていくのかと思うと、途端にこの結婚を後悔しそうになった。

そんな今日は日曜日。昨日も夜遅くまで仕事をしてきた悠翔さんは自室でまだ寝ている。
寝ている悠翔さんを起こさないように、生活音には気をつけながら家事を行なっていく。
あまり音がうるさいものは避けていたため、悠翔さんを起こすことなく家事を終えることができた。
そのことに一安心した。休憩がてらコーヒーを淹れ、ついでにスマホで求人検索をすることに。
最近、求人検索向けのアプリがあることを知り、インストールした。そのアプリを使って家事の合間に求人を探している。
ハローワークの時もそうだったが、未だにどんな仕事がしたいのか分からずにいる。
それなら適当にアルバイトでもしてみようかな…なんて考えたこともあったが、なかなか踏み出せずにいた。
自然と溜息が零れ落ちる。このままずっと働くことができないのではないかという漠然とした不安が生まれる。
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