雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
疲れたので休憩をすることにした。リビングのソファに腰掛け、身体を休める。
家事をする時に使用するエプロンのポケットからスマホを取り出し、再びもう一度求人アプリで求人をチェックする。
何度求人一覧を眺めても、したいと思える仕事がない。どれもピンとこない。画面を眺めるだけで終わってしまう。
このままではまずいという危機感はある。生活のためなら何でもいいと頭では分かっているはずなのに、どうしても前へ進むことができない。
いつからこんなに臆病になってしまったのだろうか。何もできない自分へ苛立ちと劣等感に苛まれ、嫌気が差す。
また溜息が零れ落ちる。ずっと同じことの繰り返しだ。どうにもならない現実に自分でもどうしたらいいのか分からず、途方に暮れる。
それでも明日はやってくるから、日々を生きていくしかないわけで。今こうして悠翔さんのお家に住まわせてもらっていることに感謝している。

だからこそここに居られるうちに仕事を見つけて、一人でも暮らしていけるようにしておきたい。
この結婚には期限がある。契約を交わして結婚したのだから、いつか終了を迎える日が訪れる。
こんなに好条件な結婚はない。これが会社だとするととても体制面が整っている会社だ。

しかし現実はそこまで甘くない。こんなに都合の良い条件がずっと続くはずがない。
いつか夢は醒める。その夢が醒めないうちに私は変わりたい。もっと私を好きになりたい。
でも今の私にはまだ変わる勇気が足りないみたいで。求人アプリの画面をそっと閉じた。

気持ちを切り替えて、今度は料理のレシピが掲載されているアプリを立ち上げ、今晩の料理のレシピをアプリで探すことにした。
悠翔さんから生活費としてお金を頂いているので、その範囲内で上手く買い物をして料理をしている。
それにしても結構頂いているため、食費以外の生活費を含めても余りそうなくらいだ。
余ったお金は翌月に繰り越す予定でいる。頂いている生活費を全て使い切るなんてこと、さすがに勿体なくてできない。
生活費を負担してもらえているだけで有難い。その有り難みに感謝し、頂いた生活費の範囲内でやりくりをしている。

そんな今晩のメニューはお昼ががっつりしていたので、夜はその分ヘルシーにしたいなと思い、鶏肉とレンコンの甘酢炒めにすることにした。
副菜とスープも一緒に作る。副菜は小松菜とにんじんと豆腐を和えたもの。スープはワカメスープを。
悠翔さんにまた美味しいと言ってもらえたら嬉しいな。そんな想いを込めて料理を作る。
もっと料理のレパートリーを増やしたい。もっと悠翔さんに美味しいものを食べさせたい。そんな気持ちがどんどん芽生えていく。
この気持ちが一体何なのか、まだ今の私には分からなかった。自分の本当の気持ちが分かるのはもう少し先の話…。
まだ自分の気持ちが分からない私は、悠翔さんのために料理を作った。悠翔さんの帰りを待ちながら。早く帰ってくることを願って…。
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