雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
「あんたの言う通り、俺は確かに手は出さないよ。そんなに飢えてないし、無理矢理襲う趣味はないからな。
だけどあんたが心配だ。そんな簡単に男に警戒心を緩めるな」

自分は何もしないと警戒心は解いておきながら、私には警戒心を持てと言う。
矛盾している。こんなの警戒心を持つなんて難しい。よりもっとこの男に安心感を抱いてしまう。

「…とは言ってもガチガチに身構えられても、こっちとしても困るけどな。飯食って、軽く雑談する程度だから、気楽に座って待っててくれ」

いくら男と女とはいえども、お互いにそんな気は全くない。
たまたますれ違ってぶつかっただけだ。そんな間柄で何か生まれる方がおかしい。
私達は何か起きる以前の関係で。何か始まるのだとしたらこれからだ。

「分かりました。気楽に待たせてもらいます」

私がそう言うと、安心したのかキッチンに立ち、料理を始めた。
男は普段からちゃんと自炊をしているみたいで、手際が良かった。

「あんた、苦手な食べ物とかあるか?」

食べられないものを作っても、私に悪いので一応聞いてくれたのであろう。
特に食べられないものはないので、素直に答えた。

「特にないので大丈夫です」

「そうか。分かった。それじゃこっちが作りたいものを作らせてもらうな」

私の答えを聞いて安心した男は、料理をするのを再開し始めた。
その様子を見ていて、思わず聞いてしまった。

「料理はよくされるんですか?」

気がついたら口に出して聞いていた。それぐらいこの男のことが気になっていた。

「一応な。でも男の一人暮らしだから、大したものは作れないけど」

男とか女とか関係ない。ちゃんと自炊をしている時点で立派だ。

「…よし、できた。こっちのダイニングテーブルで食べるから、こっちに来てくれ」

私が座っているソファはリビングの方で。ダイニングテーブルはキッチンの側に配置されている。

「分かりました。そっちへ行きます」

ソファから立ち上がり、ダイニングテーブルへと向かった。
椅子を自分が座れる位置まで引き、座った。
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