雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
「奈緒、俺は奈緒に自分らしく生きてほしいから居場所を提供した。無責任に自分の都合で今日で終了です…なんてことはしねーから。奈緒がここで暮らしたいと思うまではずっとここに居ていいから。俺の奥さんをしててもいいから…」

何も言わなくても悠翔さんには私が何を考えていたのか分かったみたいだ。
最初から隠す必要なんてなかった。だって仕事をしていない私と契約結婚をしてくれたのだから。

「いいんですか?ずっと契約結婚をすることになっても…」

「いいよ。奈緒だから結婚したんだよ、俺は」

傷だらけの私にその言葉は、悠翔さんのことを好きになってしまう。
いや、もう好きだ。あの日偶然出逢って居場所を提供してもらった時からずっと…。
気持ちを自覚した途端、悠翔さんと出逢えた奇跡に感謝した。契約結婚でも私を大事にしてくれる旦那様に出会えたのだから。

「悠翔さんはずるいです…」

そんなことを言われてしまえば、よりもっと悠翔さんを好きになってしまう。

「ずるくないよ。たとえ契約結婚だとしても、俺は奈緒だから結婚したんだよ」

悠翔さんが私と結婚したいと思うほど、私の何が良かったのか未だに分からないが、そう思ってもらえて嬉しかった。
そう思ってもらえていなかったら、今頃私はあの部屋にずっと一人で引きこもっていた。
それだけは絶対に嫌だ。もう絶対にあの頃には戻れない。

「奈緒、もう少ししたら仕事が落ち着くと思うから、一緒に過ごせる時間が増やせると思う。今まで一人にしてごめん…」

次の瞬間、悠翔さんに優しく抱きしめられた。
ただそれだけで悠翔さんの想いが伝わってきた。

「これからは一人にしない。もっと奈緒と一緒に居たいから…」

悠翔さんの言動一つ一つに、私の心はどんどん惹かれていく。
気持ちを自覚した途端、私の想いは止められなかった。

「ずっと傍に居させてください。悠翔さんの傍に居たいです…」

悠翔さんが私に甘える機会を与えてくれた。そのお陰で私の心は軽くなった。
一度甘えてしまったら、悠翔さんに甘えずにはいられなかった。

「もちろん。俺もずっと奈緒の傍に居たい」

暫くの間、悠翔さんはずっと抱きしめてくれた。私の心が落ち着くまで…。
悠翔さんの温もりに私の心は綻んだ。この人の温もりにずっと包まれていたいと思った。
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