雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
「鮪づくしで大丈夫だよね?」

注文する前に最終確認を取ってくれた。
私は悠翔さんの問いに答えた。

「はい、大丈夫です。鮪づくしでお願いします」

「了解。鮪づくしで注文…」

悠翔さんが鮪づくしを注文してくれた。あとは鮪づくしが届くのを待つのみだ。

「注文した寿司が届くまでまだ時間がかかるから、奈緒、先にお風呂に入ってきたらどうだ?」

確かに時間があるので、先にお風呂に入るのには賛成だが、仕事をしてきて疲れている悠翔さんよりも先に入るのは申し訳ないので、先に悠翔さんに入ってほしい。

「悠翔さんが先に入ってください。お仕事してきて疲れていると思うので…」

私がそう言うと、悠翔さんは渋い顔をした。

「いや、だめだ。奈緒が先に入って。奈緒にはもっと自分の身体を大事にしてほしい」

先程のことを悠翔さんは気にしているみたいだ。
それはそうか。自宅に帰宅したら人が倒れているなんて恐怖でしかない。
悠翔さんが心配してくれているのは純粋に嬉しかった。
でもこれ以上迷惑をかけるのは違う。悠翔さんの心労を減らすためにも、ここは悠翔さんのご厚意に甘えることにした。

「分かりました。ここはお言葉に甘えて、お先にお風呂を頂きますね」

素直に人の親切心を受け入れて、それに甘える…ってなかなか難しいけれど、自分に素直になって誰かに頼るって大切なことだと学んだ。
私は限界まで自分を追い込んでしまったから、意識を失って倒れてしまった。
一番良くない形で迷惑をかけてしまった。迷惑をかけるまで自分が迷惑をかけていることに気づかなかった。
迷惑をかける前に気づけたらよかったのに。今では迷惑をかけたことを後悔している。

だからもう心配させるような迷惑はかけない。ちゃんと悠翔さんを頼ると心に誓った。
頼れる人がいるというだけで、私の心模様は大きく変化した。これも悠翔さんに出会って、悠翔さんが手を差し伸べてくれたお陰だ。
私達の結婚は決して許される結婚ではない。今でも偽装結婚が正しいとは思わない。人として道徳に反していると自覚している。
それでも悠翔さんと選んだこの結婚を後悔していない。私に居場所を与えてくれたから。
悠翔さんへの感謝の気持ちを忘れずに、悠翔さんが与えてくれる優しさを素直に受け止めることにした。
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