雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
「おう。そうしてくれると助かる。今日は俺がお風呂の準備をするからここで座って待ってて」

本来なら私がやらないといけない仕事だが、私の体調を考慮して悠翔さんが代わりにやってくれることに…。
私はその間、ソファに座って寛いでいた。普段なら考えられない光景だ。
何もせずにのんびりするのは久しぶりかもしれない。至れり尽くせりなこの状況になんだか落ち着かない。

「今、お湯を入れてきた。満タンになったら機械が知らせてくれるから、そしたら奈緒が先に入ってね」

お風呂のお湯を沸かすだけではなく、浴槽と浴室も洗ってくれたみたいだ。
いつも自分がやっていることを代わりにやってもらえることがとても有り難くて。
この想いを悠翔さんに伝えたいと思い、伝えることにした。

「悠翔さん、ありがとうございます。私の仕事なのに代わりにやってもらえてとても嬉しいです」

今までの私なら、申し訳ない気持ちに苛まれていたと思う。
でも今の私は違う。悠翔さんの優しさが心に染みて、とても嬉しかった。

「こういう時こそ、お互いに助け合いが大事だと思うから、俺は俺にできることをしただけだよ」

悠翔さんの言う通り、助け合いは大事だ。困った時はお互い様である。

「確かにそうですね。助け合いは大事ですもんね」

「だろ?だから気にしなくていいからな。奈緒にはできる範囲内で頑張ってほしい」

お礼を伝えたつもりが、逆に励まされてしまった。
悠翔さんは優しい。悠翔さんの優しさが私にはとても心地良くて。胸の奥に温かい気持ちが広がっていく。

「分かりました。でも家事に関しては全く無理はしておりませんのでご安心ください。もう仕事を探すことは諦めます」

これは私なりの決意表明だ。迷惑をかけたお礼として。

「その言葉が聞けて安心したよ。でも体調が悪い時は言ってくれ。その時は俺がやるから」

悠翔さんはきっと私に頼れる場所があることを教えたかったのかもしれない。
私が頼るのを下手なのを見越して。悠翔さんは私以上に私を理解しているみたいだ。

「はい。もちろんその時はよろしくお願いします」
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