雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
「悠翔さん、私は悠翔さんが傍に居てくれればそれだけで充分なんです。それ以上の望みはなくて。もう充分すぎるほど私にとって大きな望みなんです」

今まで奈落の底に居た私を、地上まで救い上げてくれた。
もう本当にそれだけで充分だ。悠翔さんの傍に居られることが私の一番の幸せだ。
これ以上の幸せが考えられない。これ以上を望めばバチが当たりそうで怖い。
それならこれ以上を望みたくない。悠翔さんの傍に居られればそれだけでいい。

「それで週末のことなんですけど、悠翔さんが行きたい所へ行きたいです。それが私のやりたいことです」

私なりに精一杯考えた。望みがない私の唯一の望みは悠翔さんだけだ。
悠翔さんのことをもっと知りたい。悠翔さんの趣味や好きな食べ物…など、悠翔さんについて知りたいことがたくさんある。
私に悠翔さんを知る権利があるのかどうか怪しいが、もし教えてもらえるのであれば教えてほしい。

「奈緒の気持ちを素直に教えてくれてありがとう。でも俺も同じ気持ちなんだ。奈緒のことがもっと知りたい。だからお互いにお互いのことを教え合うのはどうかな?」

それは悪くない提案だ。悠翔さんに興味を持ってもらえていることが嬉しかった。

「良い提案だと思います。私は悠翔さんの意見に賛成です」

「それじゃ週末はショッピングモールに行かないか?お互いに好きなものを知れる機会になると思うし」

悠翔さんと一緒にショッピングモールに…。今から週末が楽しみで仕方がない。

「行きたいです!悠翔さんと一緒にお出かけするのが楽しみです」

私がそう伝えると、悠翔さんは微笑んでくれた。
そして悠翔さんは手を伸ばし、私の頭を撫でてくれた。

「俺も楽しみ。早く仕事を終わらせて奈緒との時間をもぎ取らないと」

悠翔さんは今、仕事が多忙な時期だ。それなのにも関わらず、私との時間も考えてくれている。
その優しさが私の心に温かい気持ちを灯らせてくれる。より彼のことが好きになっていく。

「そろそろ寝よっか。もう夜も遅いし」

そう言われて居間にある時計で時間を確認すると、それなりに良い時間を迎えている。

「そうですね、そろそろ寝ましょうか。悠翔さん、おやすみなさい」

「おやすみなさい、奈緒」

就寝するためにそれぞれ寝室へと戻った。
今日は本当に色々あった。そのお陰で悠翔さんと心の距離が縮まった。
偽装結婚は他人同士が同居するだけに過ぎないかもしれないが、こうやって少しずつ距離を縮めていけばいいのだと知った。
来週末を楽しみにしながら、眠りについた。
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