雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
昨夜の電話が原因なのは分かってる。電話がかかってきてから悠翔さんの様子がおかしくなったから。
あの時、私が電話について触れたから気分を害したのかな？
でも電話に応じずに、何事もなかったかのように振る舞われたら、普通は気になるはず。
それが悠翔さんにとって迷惑だとしたら、どうやら私は踏み込みすぎたようだ。
悠翔さんが帰ってきたらちゃんと謝ろう。もう悠翔さんのプライベートを詮索しないためにも。

こういう時、偽装結婚の難しさを体感する。どこまでなら踏み込んでも良くて、どこからがダメなのか。
線引きが曖昧すぎて私には距離感が難しい。私には向いていないとつくづく思い知らされる。
今までずっと悠翔さんの優しさに甘えすぎていた。甘え過ぎた結果、悠翔さんの限界を越えた。
もう悠翔さんは私に優しくしてくれないかもしれない。ずっと避けられ続けて悠翔さんと一緒に過ごす時間が減ってしまうかもしれない。
それでも私は悠翔さんの側にずっと居たい。ずっと側に居るためにも悠翔さんの理想の奥さんになれるよう頑張って努力をすると誓う。

でも神様はそこまで優しくないということを忘れていた。突然、私に試練を与えるということを。
まだ何も知らない私はいつも通りに家事をこなし、悠翔さんの帰りを待っていた。
何て謝ろう。ただ謝りたいだけなのに、いざ謝ろうと思うと、昨日の電話に触れることになってしまう。
触れない方がいいと分かっているので、どう謝ればいいのかが分からない。
電話のことに触れないようにしつつ、昨日はごめんなさい、次から気をつけますとだけ伝えれば問題ないはず。
悠翔さんの方から距離を置かれたことが今までなかったため、動揺している。
謝罪が上手くいかなかったとしても、悠翔さんとの生活はこれからも続いていく。
少しでも快適に暮らせるようにできたらいいなと思っているので、できれば謝罪が上手くいくことを願っている。

いつもなら一日があっという間に感じるのに、今日はとても長く感じた。
悠翔さんの帰りが待ち遠しくて。何をしていても心が落ち着かない。
何度も時間を確認してしまう自分がいて。確認する度にまだ悠翔さんが帰ってくる時間ではないことに絶望する。
少しでも気を紛らわせようと試みるが、どれも失敗に終わり…。
こうなったら何もせずじっとしていることにした。今の私にはそうするしかなかった。
この選択がどうやら正しかったみたいで。気がついたら夕方になっていた。
これでようやくあともう少しで悠翔さんが帰宅する時間に近づいた。
さて今から夕飯の支度をしようと思い、動き始めようとしたその時だった。
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