【短】卒業〜飯田理子の場合〜
でももう駄目なのだ。
少し離れた場所で此方を伺っている友人達の中にいる彼女。
好奇心と期待でキラキラした瞳を隠そうともせず、さっきから彼を見ている。
数週間前、大学の構内で抱き合っている2人を見た。彼の彼女を見つめる目が、とても優しいものだった。その彼の目を見た瞬間に、それまでなんとか繋ぎ止めていた私の中の色々なモノが音をたてて崩れていった。
ワタシハ“ツゴウノイイオンナ”ニスギナイ
そう悟った。
だから、バイバイ。ぐちゃぐちゃになってしまった色々なモノは、せめて私が持っていってあげるから、あなたからは最後に清々しいくらいの“サヨナラ”が欲しい。

「……何があったのかはわかんねぇけど、とりあえず言いたい事は分かった」

あ、っと思った瞬間には、足が地面から離れていた。
彼に担がれていると分かった瞬間、思いっきり体を捩って拘束から逃れようともがく。

「ちょっ、下ろしてよ!」
「下ろしたら逃げるだろ?とりあえず捕獲」

そう言いながらも歩き出す。こっちは予想外の連続で思考が働かない。
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