尽くし系女子は再会した幼馴染に甘やかされる~恋なんてもうこりごりだと思っていたはずなのに~
「……紗菜?」

 喧騒が遠のいていくみたいだった。

 どうして、なんで。この人がここに来たんだろうか? どんなタイミング!?

 しばらくじっと見つめていたけど、さすがにずっと見るのは気を悪くするかも。

 そう思って、私は顔を背けた。しかし、その人は大股で私のほうに近づいてくる。

「お前、帰ってきてたの?」
「……まぁ、うん」

 彼が私の隣に腰を下ろす、目の前のお姉ちゃんはにやにやしていた。

「陽翔くん、私のこと覚えてる?」
「琴美さんでしょ?」
「正解」

 うつむいた私をよそに、お姉ちゃんと会話をする陽翔くん。

 私は一人、戸惑い続ける。いや、本当になんでこの人がここにいるわけ!?

「にしても、陽翔くんも変わったねぇ。なんかほら、イケメンになってる」
「別に気にしたことないんで。……にしても、紗菜はどうしたんですか?」

 ちらりと私に視線を向ける陽翔くんにいたたまれなくて、私は立ち上がった。

「ごめん、私もう行く」

 このタイミングで、一番会いたくなかった人かもしれない。

 陽翔くんには――私の惨めな現状を知ってほしくなかった。

「お金、後で払うから。ちょっと立て替えておいて――」
「紗菜」

 手首をつかまれた。隣にいる陽翔くんが、私をじっと見つめている。まるで時間が止まったみたいだった。
< 12 / 15 >

この作品をシェア

pagetop