尽くし系女子は再会した幼馴染に甘やかされる~恋なんてもうこりごりだと思っていたはずなのに~
「――っ!」

 気付いたら、爽弥の頬に平手打ちをしていた。

「最低、出て行って」

 自分でも驚くほどに冷静な声だった。

 抑揚のない冷たい声に、爽弥が怯む。

「あんたも出て行って」

 爽弥の浮気相手を一瞥して、吐き捨てる。

 彼女は私の態度を気にせず、爽弥の腕に自分の腕を絡める。

「なにこの女。爽弥、いこ?」

 甘えた態度に腹が立つ。

 ……結局、男はみんな可愛く甘えてくれる女の子が好きなのか。

 爽弥が私を見ている。居心地悪そうな表情をした彼が、ポケットからなにかを取り出す。

「もうここに来ないし。……返すわ」

 この部屋の合鍵だった。

 私は乱暴に受け取って、自身の上着のポケットにねじ込む。

 爽弥と浮気相手が部屋を出て行く。私はただぼうっと立つことしかできない。

 一瞬浮気相手と視線が合って、彼女がニコリと笑ったのが見えた。

 ……なにこの女、腹立つ。

 玄関の扉が閉まった音を聞いて、私は崩れ落ちた。

 先ほどまで一滴も出なかった涙が、あふれてくる。
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