尽くし系女子は再会した幼馴染に甘やかされる~恋なんてもうこりごりだと思っていたはずなのに~
「紗菜ちゃんは今なにをしてるの?」
「文具メーカーで働いてるよ。今は企画部にいるんだけど」
「いいなぁ。うちのも見習ってほしいわぁ」

 彼女がちらりと上の階に視線を向ける。だから、私は肩をすくめた。

「でも、瑠璃(るり)くんはすごいよね。漫画家になったんだもの」

 彼女の息子で小中の同級生、瑠璃耶(るりや)くんは大手の出版社で連載をしている漫画家である。

 すごく有名……というわけではないけど、そこそこの人気を誇っている。いわば中堅らしい。

「まぁ、仕事してくれるだけいいんだけど――と、そうだ。ちょっと待ってて」

 なにかを思い出したらしく、彼女がカウンターに戻っていく。スマホを操作し、どこかに電話をかけはじめた。

 その間にレモンサワーが届いて、私はジョッキに口をつける。

 きつめの炭酸が喉を潤す。ちょっと気がまぎれた。

(……みんな、すごいんだよねぇ)

 お姉ちゃんは結婚して子育てして、同級生の瑠璃くんはそこそこ人気の漫画家になって。

 対する私はなんだろう。彼氏に浮気されて捨てられたばかりの、会社員だ。

(どうしてこうなったのかなぁ)

 天井を見上げていると、扉が開く。視線を向けると、そこにはお姉ちゃんがいた。

「遅れてごめんね」

 私の前に座って、お姉ちゃんが笑う。

「ちょっと双葉(ふたば)がぐずっちゃって」
「いいよ。無理言ったの私だし。双葉ちゃん大丈夫?」
「寝たから大丈夫。あとは旦那に任せといたし」

 お姉ちゃんは私の身なりや大きなスーツケースを見て、微妙な表情を浮かべた。

「なに? 帰ってくるの?」
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