獣と呼ばれる冷酷総長はベルに真実の愛を求める
今の流れは、私が話を遮るタイミングじゃない、そんなことは重々承知の上だ。
隼太くんが撃たれた時の光景が蘇る。
目を覚まさなかったらどうしよう、ってずっと怖かった。
晴人くんたちもそうなってしまったら...と考えるとゾッとする。
「七瀬が正しいよ。 汚い世界より、ずっと純粋に育ってきたお前の考えが一般的」
「え?」
「でも、汚い世界で育った俺達は間違っているとわかっていても、正しい道の歩み方が分からない。 特に、美しい心を持つ七瀬のような子に関わっていない柚木には」
私は...自分の考えが正しいとは思ってない。
けど、傷つけあうのは違う気がした。
どんなに誰かを傷つけても、気持ちが晴れることはないし、残るのは虚しさだけ。
「ななせ、俺たちは北側の一般生徒を、危険な目に合わせないように出向くだけだ」
おまえが心配してるようなことには、ならないからと付け足す晴人くん。
「無理はしないで...?約束、絶対に」
「わかったよ」
それから、ローテーションで晴人くん、輝くん、颯くんが旧校舎へひとり残って、他は毎晩中央付近の見張りにつく日々が続くのである。