獣と呼ばれる冷酷総長はベルに真実の愛を求める
トラウマ













病院をでてそう時間がかからずに、私は違和感を感じた。



私が感じているということは、隼太くんはそれよりも前から気づいているはず。




その証拠に、隼太くんは私の手をぎゅっと握って離さなかった。

そして、追跡を撒くように遠回りをして人通りの多い道を選んでいる。





「七瀬も気づいちゃった?」



「な、何となくつけられてるなって」



「せーかい、相手は南高でお前がベルだってバレてる」



「バレると何かまずいの?」


「ベルは幹部に愛を与える大切な存在、敵に渡ったら人質として交渉や脅し…いくらでも利用価値があるでしょ?」




隼太くんに初めて会った時がふと頭によぎった。

まだ私がベルではない時に絡まれたあの南高の人達。



普段、友達にも触られないところを躊躇いなく触られて、あの時隼太くんが来てくれなかったらと考えたら…背筋がゾッとする。




「大丈夫、晴人たちに連絡入れてあるからもう少しだけ頑張って」



「う、うん…」




手を引かれて隼太くんについていくけど、やがて前方に黒いスーツを着た男の人たちが立ちはだかる。


後ろを振り返れば、南高の制服―青鷺火のメンバーたち。



私たちはまるで獲物のように追い詰められていた。



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