獣と呼ばれる冷酷総長はベルに真実の愛を求める
殺気には、憎しみや悲しみも混ざりあって喧騒の中なにもできずに飲み込まれそうになる。
私は…っ、知らない。
喧嘩なんて初めて目の当たりにして、ただ立ち尽くしている私が悲しくなるくらい憎しみに溢れて…
当たり前の平凡な生活が幸せだったのだと、今改めて感じる。
「女つくって鈍ったんじゃねーの?」
「…」
相手の煽るような言葉にも、隼太くんは無反応…というより聞く耳を持たずひたすら拳を当てていく。
このままだと隼太くんが危ない。
…まだなの?お願い、はやく晴人くん達来て。
この状況がずっと続けば、なにか今までのものが崩れてしまうような嫌な予感がする。
「聡明で心の美しい女って言われてるんだっけ?ベルって」
「……っ!」
「何もできずに足手まといで悔しいね?」
さっきまで隼太くんを挑発してた黒金会のリーダーらしき人が、気配もなく私の背後に現れた。
「何が目的なの…? 一人の人に大勢で襲うなんて卑怯です」
「目的があってもベルごときに教えない。…けど、この状況はお前次第で止められる」
「それは、私があなたの指示に従わないとってことですよね」
「ただ、顔で選んだだけでなくほんとに頭いいんだ」