獣と呼ばれる冷酷総長はベルに真実の愛を求める
ベンチに座って後悔していれば、聞き覚えのある声の方向へ顔を向ける。
なんともなさそうに接しているけど、颯くんは荒い息で汗をかいていた。
「わたし…、みんなに愛なんてあげられてない」
「もし俺たちがそう思ってるならとっくにクビにしてる」
ゆっくりと歩いてきて、私の隣に腰をおろす。
汗をかいていても、ふわりとバニラの香りが漂った。
「今は…? 前私がベル候補から逃げ出した時、今度は許さないって言ってたじゃん」
「それはあんたが何も知ろうとしなかったからだろ」
冷静でいようと思っても、全然冷静ではいられなくて言葉が詰まる。
何を言っても諦めてくれない。
颯くんは、根が優しいから私を連れ戻す。
「ベルの仕事放棄したんだから守ってもらう資格ないよ」
「んな事言うなよ…」
「え?」
隣にいたはずの颯くんは、いつの間にか私と向き合うようにして膝をついていた。
初めて会った時と違う。
まっすぐ、瞳に光を宿して───