獣と呼ばれる冷酷総長はベルに真実の愛を求める
私を庇う背中は今までで1番頼もしくて、隼太くんの時と同じように守られているだけの自分が悔しい。
また…、10人近くいるのにたったひとりでこの状況を切り抜けなければいけないんだ。
───そう思ってた。
「お前たちが強いのはわかった。だから、その小娘と交渉だ」
「わ、わたし…?」
予想外の展開に動揺するけど、私の返答次第ではこの場が治まるかもしれない。
傷つけ合うところを見なくていいかもしれない。
そう考えたら、私は颯くんよりも一歩前へ立つ。
「さすが肝が据わってるね」
「交渉…とは?」
「うちの派閥のリーダーがどうしてもお前に用事があるらしくてな、ついてきてほしい」
「それを拒んだら?」
男はジャケットの内側から黒い塊を出した。
私の読む本の世界では、それが当たり前に出てくるけど現実では所持を禁止されているはず。
だから、本物なんて初めてだ。