獣と呼ばれる冷酷総長はベルに真実の愛を求める
黒い塊の正体は銃。
銃口はゆっくりと私…ではなくて、颯くんの方へ向く。
「そいつが無事で済まされないだけ」
「他人の命で脅すなんて卑怯です!」
「俺たちの世界でそんな綺麗事は通じねえよ。俺は気長に待てるタイプじゃねーから今すぐ決めろ」
この人達について行ったら今度こそ無事では済まないかもしれない。
本の世界のようにピンチの時は必ず、ヒーローが登場するっていう演出もありえない。
それでも、命を懸けて守ってくれた彼らが無傷でいられるなら…。
「おい、なな! 俺は大丈夫だから、隼太くんの傍から離れるなよ」
「颯くん達は私をずっと守ってくれてた。 私にも…みんなを守らせて?」
青ざめる颯くんと反対で、大丈夫という念を込めて笑顔で見つめてから一歩ずつ黒金会のもとへ歩む。
「さすがベル、賢明な判断」
薄気味悪い笑みを浮かべて、私の手を掴んだ。
これまで、非人道的なことをやってきた手に隼太くん達のような温かさはなくて吐き気がする。
私を呼ぶ颯くんの声がしたけど、振り返ることなく暗闇へと足を進めた。