救う気ゼロの大魔法使いは私だけに夢中。~「迎えに来るのが遅くなってごめんね」と助けてくれた見知らぬ美形に話を合わせてみたら~
「それでも! 彼は大魔法使いなんだよ! こうして意識を失っていても、魔物にとっては極上の獲物なんだ! 早く逃げようよ。ここに居ても、僕らは共に死ぬだけになる」

 パックは早口でそう言った。

「……私は逃げないわ」

「サブリナ! 自ら死を選ぶと言うの?」

「ルーファスは私たちのことを、救ってくれようとした人なのよ。眠っているから、このまま見殺しになんて、出来るはずがない」

「わわわわわっ……!! すぐそこまで、来てるよー!!」

 サブリナはパックが指さした窓を見た。そこには、巨大な目があった。

 ここで誰かを呼んでサブリナはもう自分たちは逃げられないだろうと思った。

(もしかしたら、私を食べれば満足してどこかに行ってくれるかもしれない……)

 サブリナは眠ったままのルーファスにキスをした。彼の意識はないけれど、これで最期なのだろうと思った。

「パックは逃げなさい。私に付き合うなんて、馬鹿なことはせずに」

 サブリナはそう言ってから、窓を見た。目の前には恐ろしい魔物がいる。けれど、不思議と落ち着いていた。

(ルーファスが生き残る可能性を、少しでも増やすわ……私を食べている間に、助けが来るかもしれないもの)

 死の覚悟を決めて、手をぎゅっと握った。

 魔界の門を封印してくれるルーファスが居なければ、どうせ国ごと滅亡して死んでしまう。これは、前提条件としてこれまでにも変わらないものだった。

 自分の命を使って何かの可能性が増えるならば、それで良かった。





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