救う気ゼロの大魔法使いは私だけに夢中。~「迎えに来るのが遅くなってごめんね」と助けてくれた見知らぬ美形に話を合わせてみたら~
 健全な時間にラディアント伯爵邸へと帰り着く娘を見て、あれを指示した父フレデリックとて、安心したような表情を浮かべていた。

 貴族として国を救うためには娘を一人差し出すことも致し方ないと思いつつも、父親としては複雑な心境ではあったのだろう。

 ルーファスはお茶会へ向かうと言ったサブリナの言葉を聞いて、こともなげに頷いた。

「気を付けて……雨が降りそうだから」

 彼はそう言い馬車に乗るサブリナの手を取り手伝うと、窓から手を振っていた。

 緑が続く窓を見つめて、サブリナは複雑な心境になっていた。ルーファスには自分勝手なところなどなく、出来るだけ意志を尊重してくれていた。

(ルーファス。穏やかな性格で優しい男性だわ。けれど……どうして、私のことを恋人だと言っているのかしら。これまでに会ったこともないのだから、やっぱり、誰かと私を間違えているのかしら……?)

 大魔法使いルーファスは長い時を生きていて、その中で愛した女性とサブリナは似ているのかもしれない。もしかしたら、偶然名前も同じな過去の誰かの身代わりなのかもしれない。

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