救う気ゼロの大魔法使いは私だけに夢中。~「迎えに来るのが遅くなってごめんね」と助けてくれた見知らぬ美形に話を合わせてみたら~
 貴族令嬢は舞踏会には|お目付役(シャペロン)を伴うことが常識とされているが、サブリナが助けを求めるように視線を走らせても、彼女のお目付役として来たはずの叔母レグゲート子爵夫人は、壁際に座り隣に居る同じ年頃の女性と歓談し、盛り上がっているようだった。

 サブリナは真面目な性格で礼儀正しいことを知っているため、彼女ならば少しくらい目を離しても大丈夫だろうと思っているのだろう。

(仕方ないわ……とにかく、ここに居る誰かの手を掴んでダンスをしましょう。この状況で全員を断ってしまう訳にもいかないもの)

 困っていたとしてもここに助けは来ないと諦めたサブリナは息をつき、その時、いきなり背中から誰かにぶつかられてしまった。

「……ごめんなさい!」

 妙に慌てていた女性が集まっていたサブリナたちへ割って入り、そして、立ち止まることもなく、そのまま走り去って行ってしまった。

 色とりどりのドレスを着た貴婦人が溢れる舞踏会が催される会場には、まったく似つかわしくないような、真っ黒なローブを羽織った女性だった。

(え……魔女? どうしてこんな場所に?)

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