救う気ゼロの大魔法使いは私だけに夢中。~「迎えに来るのが遅くなってごめんね」と助けてくれた見知らぬ美形に話を合わせてみたら~
 舞踏会終わりに、人目を避けて恋人と口づけを。それは、とても叙情的(ロマンチック)で若き乙女なら夢見るような状況なのかもしれない。

 それなのに、サブリナはキスを拒否してしまった。

 それをしてしまってから『しまった』とは思ったものの、時間は戻せない。これからサブリナからキスをせがんでも、無理に合わせたようになってしまうだろう。

(ああ。困ったわ。何をどうしても不自然になってしまうわ。ここから私が彼にキスをしてしまうのも、おかしいわよね)

 ルーファスは恋人だと言っていて自分もその関係を受け入れているのだから、キスを避けてしまうのはおかしい。

 だと言うのに、もう避けてしまった後だった。

「どうして、君が謝る?」

 いまだ息が掛かる程近くにルーファスの顔があって、サブリナは赤くなってしまった顔を上げられずに呟いた。

「私たちは……再会して、間もないので」

 それは、ここで恋人のキスを断る理由にはならないかもしれない。けれど、ルーファスは彼女の言い分を聞いてから、身体をゆっくりと離した。

「それはそうだ。僕たちは長い間、会ってはいなかった」

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