救う気ゼロの大魔法使いは私だけに夢中。~「迎えに来るのが遅くなってごめんね」と助けてくれた見知らぬ美形に話を合わせてみたら~
 余裕ある仕草で足を組み替えた彼は、それ以上はサブリナと距離を近づけようとはしなかった。

 もう一度はないとほっと息をついたものの、サブリナはこれで良かったのだろうかと心の中で葛藤した。

 ルーファスは当たり前のように、キスをしようとした。けれど、それはおそらくサブリナに対してキスをしようとしたのではないのだ。

(本当に……恋人とは、一体、誰のことなのかしら? 間違っているくらいだもの。私にそっくりな、誰かの事よね)

 サブリナは彼に聞きたいけれど聞けないという状況に、そろそろ苛立ちを感じ始めていた。

 父フレデリックからはこの国を救ってくれる救世主たるルーファスに求められれば応じるようにと言い含められ、それにサブリナは先ほど逆らってしまったかもしれない。

 けれど、ルーファスが言う『恋人』はおそらくサブリナではないのだ。

 求められているのは自分ではないことをわかりつつ、彼からのキスを受け入れその先までもと言うには、これまでに大事に育てられた貴族令嬢であるサブリナには、あまりにも難しい行為だった。


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